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プレゼントエピソードのご紹介

母の日のプレゼントとなった千羽鶴

千羽鶴を作ろうと思ったきっかけ

4年前の秋、ほとんど病気らしい病気などしたことのない健康だった父が、ある日突然腹部に異変を訴えてとても苦しそうにし始めました。すぐに車で病院に行き診てもらったところ、すい臓がんであることがわかり、入院することになりました。私たち家族には余命半年とも告げられました。

父は1か月程度の検査入院後、退院して実家から週一回抗がん剤による外来治療となりました。その頃の父はがん患者とは思えないように元気で、自分で車を運転して病院へ行き、抗がん剤治療を受けていたほどです。半年以上も健康に生きて、がん告知から2年の間に1か月程度の入院を繰り返しましたが、4回目の入院になると、容体が一変してきました。足が異常にむくみはじめ、歩行器がないと自分で歩くのが困難になりました。そして容体はさらに悪化して、がんが十二指腸などに転移していることが分かり集中治療室での緊急手術を受けることになりました。

とてもショックでしたが、何より一番辛いのは父本人です。私たちが落ち込んでいるわけにもいかず、なんとか元気を取り戻して、病気に打ち勝ってほしいと思い、なにか励みになるいいプレゼントはないか、と考えました。私は金銭的に余裕がありませんので、手作りでできるものを考えました。

そこで思いついたのが、千羽鶴でした。無事に病気を乗り越えてほしいとの願いを込めて、きれいな千羽鶴を作ってぜひ父にプレゼントしたいという気持ちでいっぱいでした。

実際に作成を開始して

ところが千羽鶴を作るといっても、作ったことはありませんし、そもそも鶴の折り方をすっかり忘れていました。そこで高校生の娘に折り方を教えてもらって、やっと千羽鶴作成のスタートとなりました。もちろん仮に鶴を千羽折ったとしても、それをどのようにしてつなげて千羽鶴に仕上げるのかなど全く知りません。

それでもまずは鶴を千羽折ることが先決だと考えました。しかしいざ鶴を折り始めてみると、最初のうちは簡単だと思っていたのですが、十羽も折るともうくたくたになってきました。1日に十羽折るペースだと3か月以上かかります。しかし仕事もありまた病院に様子を見に行く間を縫っての作成は、なかなか厳しいものでした。緊急手術後の父はひとまず峠を乗り越えた様子で、入院生活は続いているものの元気を取り戻している様子でした。

そんな父を見て、私もまた気の緩みが生じてきました。またすぐに健康な体に戻って、退院してくれる、そう信じていました。そのため鶴を折るペースも遅れがちになってきたのです。

 父の死

父は病院でも相変わらず元気な様子を見せていました。数日後には退院できる、ともされていました。また実家に戻って元気な生活を送ってくれると、みんなが信じていました。ところが昨年の3月、そのころ院内でインフルエンザが蔓延していた事情もあってか、父が肺炎を患ってしました。

それまで相部屋だったのが個室へと移され、口と鼻には酸素マスクがつけられるようになりました。そしてその2日後には、あれほど元気だった父があっけなく亡くなってしまったのです。死因ががんの進行のためではなく、肺炎によるものだっただけに、とても残念で悔しい思いでした。その時鶴は900羽を超えたところまで折っていました。

父に元気を取り戻してほしいとの思いで作り始めた千羽鶴は、ショックですっかりやる気を無くして断念し、折り上げた鶴も部屋の片隅に放置していました。

 一人残された母へプレゼント

落胆した日々が続いていましたが、せっかく折った鶴をこのままにしてはいけない、と思いました。私1人がこれだけの鶴を折ったわけではなく、娘や友人が数多く折って協力してもらっていたからです。そこで気を強く持って再び千羽鶴の作成に取り掛かりました。5月には母の日がありますが、母の日にこだわらず1日も早く千羽鶴を完成させて、実家で一人となって悲しんでいる母に贈り、母の日のプレゼントとしようと考えました。

数日間深夜まで鶴を折って、なんとか頑張って千羽折ることができました。千羽鶴としてのつなぎ方はネットで検索して、何度も試行錯誤を重ねながらなんとか千羽鶴が完成しました。一刻も早く届けようと早速実家へ持っていき母に渡すと、母はとても喜んでくれました。父が亡くなってからとても辛く苦しそうな母でしたが、千羽鶴を実際に見るのは初めてだ、と感激していました。作り上げるのに材料費はせいぜい折り紙代くらいですが、長い期間をかけて作成した心のこもったプレゼントは、母にも十分に理解してくれるものとなりました。

プレゼントについて私が思うこと

プレゼントというと高価なものを考えがちですが、お金をかけなくても十分に喜んでもらえるものはたくさんあります。折り紙で作るオブジェのほかにも、私は男性ですが手編みのマフラーやセーター、あるいはビーズで作ったネックレスやブレスレットなどのアクセサリーも作ります。

丹精込めた手作りのプレゼントは、高級ブランド商品に決して劣らない、お金では買えない世界に一つだけのプレゼントとなります。時間や手間はかかりますが、その分受け取る相手にとって何よりの最高のプレゼントとなります。

オリジナルプレゼントであることがとても重要

これから誰かに何かプレゼントしようとお考えの人は、
ぜひ手作りに、世界で一つのプレゼントをすることをお薦めします。